脳梗塞 急性期の治療 4.5時間以降の概略

■4.5時間以降

脳梗塞患者の20-40%は発症後24-48時間以内に神経症状が悪化する(進行性脳卒中)。
したがってできるだけ早期に虚血の進行を抑える必要がある。
病型に分けて治療する。病型の鑑別が難しい場合にはアスピリン160-300mg/dayで処方。
 
・アテローム血栓性梗塞:Atherothromobotic brain infraciton ATBI
抗血小板療法:アスピリン or オザグレル(iv)
抗凝固療法:アルガトロバン or ヘパリン
 
TIAや軽症脳梗塞では再発予防を目的に経口抗血小板薬(アスピリン or アスピリン+クロピドグレル )
オザグレルもATBIに保険適用のある抗血小板薬ではあるが、抗血栓作用は弱く、1日2回の点滴治療では安定して効果得られない。経口出来ない際に用いられる。
48時間以内ではさらなる進行を抑えるため抗血小板療法+抗凝固療法も行う。
 
<抗凝固療法の実際>
アルガトロバンは最初の2日間で60mg/dayを持続点滴。その後の5日間は1回10mgを1日2回(1回3時間)行い計7日間治療する。
アルガトロバンは半減期が短いため、治療開始して48時間以降の間欠的持続投与に以降した際に、神経症状が増悪することがよくある。その際には(1)アルガトロバンの持続点滴の期間を延長する(2)次に述べるヘパリンの持続点滴に変更する(3)経口抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル 、シロスタゾール)の2剤併用を行う などの選択肢がある。
ヘパリンは通常はじめにloading doseとして2千単位をiv。その後1万〜1万5千単位/dayを目安に持続点滴。APTTは正常の1.5-2.0倍の延長を目標に調整。
 
ラクナ梗塞
オザグレルのみ有効性が考えられている。
1回80mg 1日2回の点滴静注(1回2時間)。
投与期間は1-2週間で投与する。
ラクナ梗塞は48時間以降に症状の進行がみられることは稀であるため、症状が安定したら積極的に離床、リハビリテーションを行うべきであるが、BAD(branch atheromatous disease)では症状が48時間を超えて進行する。
BADに対しては複数の治療法を組み合わせた急性期治療(アルガトロバン+シロスタゾール+エダラボンなど)が試みられているが確立したものはない。
 
・心原性脳塞栓症
心原性脳塞栓症の場合は他の病型と比較して、側副血行路の発達が不良で虚血の程度が強いため、発症後4.5時間以降はペナンブラの救命を治療の目的とした抗血栓療法が有効である可能性は少ない。
しかし、4.5時間以上でも主幹動脈閉塞例で臨床的にペナンブラが残存していると考えられる症例に対しては、最近血管内治療が行われるようになってきた(→See 血管内治療の今)。

 

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心原性脳塞栓症では、閉塞血管の自然再開通による出血性梗塞の合併が高率に起こるため、アルガトロバンやオザグレルは禁忌とされている。
しかし、心原性脳塞栓症は再発率が高いので、発症早期から再発予防を目的としたヘパリンによる抗凝固療法を行うべきであるとの意見もある。
しかし、AF例を対象として、ヘパリンの有効性を検討した大規模臨床試験では、ヘパリンは急性期の虚血性脳卒中の再発率を減少させるが、逆に出血性脳卒中の発生が増加するため、全脳卒中の発症率はヘパリン使用の有無により差はなく、急性期のヘパリンの有効性は否定的な結果であった。
最近は発症後1-2週間以内は抗凝固療法は行わず、その後ワルファリンやDOACによる経口抗凝固療法が多くなっている。
 
 
 
 
 

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