脳震盪

結局どうしたらいいのかわからない脳震盪について

 

 

 

■脳震盪とは

頭部、顔、頸部、その他の部位への直接的または間接的衝撃による、頭蓋内の急速回転運動のため起きる脳の一過性の機能障害。症状はベースラインから急激な変化をきたし、一般的に頭痛・めまい・平衡障害・健忘や意識消失を起こす。画像上解剖学的異常を認めない

 

■脳震盪の生理的機序

脳震盪により軸索にストレスがかかり、神経伝達物質が過剰放出 ionic fluxされる。これによりNa-Kポンプ活性が増加し、血流変化がないのに細胞内グルコース消費が増加。代謝変化metabolic crisisが生じる。これが頭痛・目眩といった一連の症状を引き起こす。

これらの異常は、解剖学的・構造的な異常ではなく、代謝的・機能的な異常であり、外傷評価目的のCT/MRIでは所見が得られない。functional MRIで異常が認められる。これらの代謝の撹乱は、画像上回復まで30-45日かかる。

 

■脳震盪の症状 ―意識消失は必須ではない―

頭痛(93%)、めまい(75%)、集中力の低下(57%)、見当識障害・ふらつき(46%)、視野異常・羞明(38%)、嘔気(29%)、眠気(27%)、健忘(24%)、意識消失(5%)

 

■脳震盪かな?

まず脳震盪か?CT撮影ガイドラインを参考に診察、頭部CT撮影を。

 

■段階的競技復帰プロトコル(Graduated Return to Play protocol:GRTP)の一例

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 出典:スポーツにおける脳震盪の評価、復帰時期 JHOSPITAL network. Clinical question 2014/10/27

 

■脳震盪のフォローは?

一般的に平均で7-10日で症状改善。80%は3週間以内に改善。

しかい80%は受傷翌日に症状出現。脳震盪が起こりそうなエピソードなら前もって説明を。

以下のSISに注意。

 

■Second Impact Syndrome:SIS

最初の脳震盪後まもなくの2回目の脳震盪で、重大な脳浮腫、血管損傷などが起こること。

1回目の脳震盪症状が残存時vulnerability periodに2回目の脳震盪を起こすとSISのリスク。

意外に恐ろしい。18例の死亡例あり。若年ほど危険性高い

3回以上の脳震盪で認知機能障害や鬱のリスク。

プロのアメフト選手やボクサーは有意に認知症になりやすい。NFL選手、50歳で6.1% vs 1.2%。

Alzheimer病の原因蛋白アミロイドβも頭部外傷後増加する。

 

■安静にしすぎるのも良くない?

Thomasら

11-22歳の88人の脳震盪患者に対して、「5日間の厳密な運動制限」vs「通常通りの1-2日の安静で徐々に日常生活に戻った場合」を比較。神経機能は有意差ないが、厳密な運動制限群の方が脳震盪症状の出現が多かった。

Groolら

5-17歳の2,413人の脳震盪患者に対して、「7日間の絶対安静」vs「7日以内に身体活動再開」を比較。受傷後28日時点での脳震盪後症候群は、絶対安静群よりも身体活動再開した方が少なかった(43.5% vs 24.6%)。

 

安静にしすぎるよりも少し運動させたほうがいいかもしれないです。

 

■脳震盪後症候群

受賞直後から注意・集中力の低下、課題遂行力の低下、記憶障害といった神経心理学的症状(認知機能障害)と、頭痛、目眩、疲労感、易刺激性、不安、不眠といった症状が出現する。自尊心の喪失と永続的な脳損傷への恐怖から生じる抑うつと不安感を伴うことがある。この感情が本来の症状を増強させ、悪循環をうむ。一部の患者は心気的で、診察と治療を求め、頑固な病像を呈する。

年齢

8-12歳

1点

13-17歳

2点

性別

女性

2点

既往

脳震盪の病歴(1週間以上継続)

1点

片頭痛の病歴

1点

身体所見

バランステスト陽性

1点

頭痛

1点

騒音に敏感

1点

倦怠感

2点

低リスク:−3点、中リスク:4―8点、高リスク:9―12点

 

■脳震盪は入院か?

18歳未満のGCS14-15の小児13,543人対象に、初回CTが正常群で経過追跡した。経過中に何かしら症状があった患者で画像を再検査したところ、異常が認められるのは1%未満で、治療介入が必要なものは0人だった。

「GCS14-15で初回CTが正常であれば帰宅経過観察可能」という方針も存在する。

 

■具体的な指導法

「脳震盪で脳神経伝達物質が過剰に放出され、脳代謝が乱されています。症状が正常に戻るのに7-10日かかりますが、代謝が完全に元に戻るには30-45日もかかります。大学生より高校生の方が悪化しやすいです。また女子の方が悪化しやすいです。今はスポーツは完全に休んでください。脳も休ませてください。TVもスマホもネットもダメです。症状が消えるまでクラブは休んでください。2回目の脳震盪は大変危険なことがありますので、頭を打たないように今後十分注意してください。運動は症状が治まってきてから徐々に再開しましょう。」

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