急性期脳梗塞 血管内治療の今

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Annual Review Neurology 2020より
 
■発症から6時間以内のICA・MCA閉塞
2015年に5つのRCTが発表された。
まず最初に、MR CLEAN試験が発表された。
 
発症6時間以内の前方循環系の脳主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞を対象に、t-PA静注を含む内科治療単独群 vs 内科治療+血栓回収療法の比較。併用治療群は内科的治療単独群と比べて、90日後の日常生活自立度が有意に改善することが示された。死亡率や症候性頭蓋内出血の発生率に差はなかった
 
この結果を受け、進行中だったESCAPE、EXTEND-IA、SWIFT PRIME、REVASCATの残りのRCTも中止され、一旦中間解析が行われることとなった。その結果、いずれの試験でも血栓回収療法の有効性が示された。
 
これら5つの研究を統合して解析を行ったHERMES研究では、血栓回収療法は内科治療単独と比べて90日後のmRSスコアを良好な方向へシフトし、日常生活自立例(mRS 0-2)を増加させ(46.0% vs 26.5% P<0.0001)、90日後の死亡率(15.3% vs 18.9% P=0.16)や5日以内の症候性頭蓋内出血発生率(4.4% vs 4.3% P=0.81)には差がないことが示された。
 
これらの結果から2015年にAmerican Heart Association/American Stroke Associationではガイドラインが変更。
1.発症前のmRSスコアが0-1
2.ICA or MCA M1部の急性閉塞
3.18歳以上
4.NIHSS≧6
5.頭部CT or DWIでASPECTSが6点以上
6.発症6時間以内に穿刺可能
以上全てを満たす急性期脳梗塞の場合にステント型血栓回収機器を用いた血栓回収療法を行うべきとされた(クラスI エビデンスレベルA)。日本でも同様にグレードA。
 
 
■発症時間不明、発症6-24時間に対する有効性
すでに倒れているところを発見された場合や、wake up strokeの場合は正確な発症時刻がわからない。
その場合最終健常確認時刻を発症時刻と仮定し、そこから6-8時間以上経過しているものは、今まで血栓回収療法の適応からは外れていた。
しかし、このような症例の中には、真の発症時刻から6時間以内である場合や、6時間を超えていても側副血行の発達により梗塞巣が完成していないが低灌流により神経症状を呈している場合があり、主幹動脈閉塞の再開通療法が有効である可能性が考えられた。
 
最終健常確認時刻から6時間を超える症例に対して、血栓回収療法と内科治療を比較したRCTが行われた。
DAWN試験とDEFUSE3試験があり、詳細省略。
結論として「経皮経管的脳血栓回収容機器 適正使用指針 第3版」によると、最終健常確認時刻から6時間を超えたICAまたはMCA M1部の急性閉塞が考えられる脳梗塞では
・mRSスコアが0または1
・NIHSSスコアが10以上
・DWIでASPECTSが7点以上
以上3つの条件を満たした症例に対して、最終健常確認時刻から16時間以内血栓回収療法を行うことが強く推奨された(グレードA)
また、DWIにおける梗塞体積と神経症状にミスマッチがあると判断される症例に対しては最終健常確認時刻から24時間以内血栓回収療法を開始することが推奨された(グレードB)
 
 
血栓回収機器
ステント型と吸引型がある。
どちらも有効性に差がないことが示されている(ASTER試験、COMPASS試験)。
両方を同時に使うcombined techniqueが良いとされている。
 
 
■M2以遠閉塞、脳底動脈閉塞
HERMES試験ではM2閉塞(94例)に対して内科的治療に対する血栓回収療法の有効性は示されなかったが、一方でM2閉塞に関する12の研究のメタアナリシス(Saber H, et al. J Neurointerv Surg. 2018; 10: 620-4)や後ろ向き他施設コホート研究(Miura M, et al. J Neurointerv Surg. 2019; 379: 611-22)では血栓回収療法の有効性が示唆されている。
 
 
■広範囲虚血に対して
ASPECTS6点未満の患者に対する血管内治療の有効性は未だ証明されていない。
しかし、虚血領域が広範囲の症例においても、錐体路や言語中枢などの機能的に重要な部分が梗塞に至っていなければ、再灌流療法が有効な可能性がある。
発症24時間以内のASPECTS 0-5点を認める患者のうち、血管内治療群 vs 非血管内治療群では90日後の転帰良好例(mRSスコア0-2)である患者は、それぞれ19.8% と 4.2%であり、オッズ比が2.33と血管内治療の有効性が示された。

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