小腸腫瘍とは全消化管腫瘍の5%ほど。
従来の内視鏡では検査が困難であったが、2000年以降カプセル内視鏡、ダブルバルーン内視鏡という新たな小腸内視鏡検査法が開発され、小腸腫瘍は発見される機会が増えている。
小腸腫瘍は日本では以下の3つが主たるものである
上記3種類が小腸腫瘍の約90%を占める。
欧米では小腸癌が最も頻度が高いが、日本ではこれらはそれぞれ約30%ほどでほぼ同程度とされている。
悪性リンパ腫
概念
消化管の悪性リンパ腫の最も頻度の高い臓器は胃であり小腸がそれに次ぐ。
特に回腸に多い。
男性優位の報告が多く、多発性やびまん性の症例も多くある。
胃や大腸に比べてT細胞性リンパ腫も多いが、やはりB細胞性リンパ腫の方が多い。
検査など
肉眼型としては隆起型、潰瘍型、multiple lymphomatous polyposis(MLP)型、びまん型、その他、と分けられる。
DLBCLやMALTリンパ腫は隆起型、または潰瘍型を示す。
T細胞性リンパ腫はびまん型が多く、セリアック病に合併することが多く、予後不良である。
治療
単発で限局性のものは外科的切除および術後化学療法が一般的である。
化学療法はCHOP療法が基本で、B細胞性ならRを追加する。
GIST
概念
GISTは腸管の運動を制御するペースメーカ細胞であるCajal(カハールと読む)介在細胞由来の間葉型腫瘍である。
空腸に生じやすい(悪性リンパ腫との違い)。
検査など
c-kit遺伝子陽性であることがある。
GISTは良性、悪性の明確な区別は難しく、腫瘍の大きさ、核分裂数によって悪性度が判断される。5cm以上の場合や、10/50HPF(high-power fields : 400倍視野)以上の腫瘍細胞分裂像を示すものは悪性度が高い。
腫瘍径や核分裂数が同等であっても、小腸GISTは胃GISTより悪性度が高い。
治療
原則的には病変部を含んだ外科的切除が第一選択である。
リンパ節転移は非常にまれであり、通常リンパ節郭清は行われない。
通常の化学療法や放射線療法は無効。
kit陽性ならイマチニブ投与。
小腸癌
概念
欧米では最も頻度が高いが、日本では悪性リンパ腫・GIST・小腸癌はほぼ同程度。
空腸や十二指腸に多く生じるが、以下のような報告もある。
癌の発生部位に関しては空 腸では Treiz靭帯から 60cm以内が 83.9%,回腸 で は 回 盲 弁 か ら 60cm 以 内 が 83.3% を 占 め る と されている
八尾恒良,八尾建史,真武弘明,古川敬一,永江 隆,本村 明,菊池陽介,高木靖寛,嶋津剛典,頼岡 誠,久部高司,八尾哲史,西村 拓,蒲池紫乃,竹下 宗範,永本和洋,諸隈一平,櫻井俊弘,松井敏幸.小 腸腫瘍 最近 5年間(1995-1999)の本邦報告例の集計.胃と腸 2001;36:871-881.
2000年以前の調査なのでよくわからないが、空腸付近に多そう。
中年男性に多い。
腺癌が多い。
危険因子は小腸のクローン病である。
検査など
肉眼型として腫瘤型、潰瘍型、輪状狭窄型に分類され、輪状狭窄型が最も多い。
したがって、症状としては腹痛、嘔気などのイレウス症状を呈した進行例で発見されることが多い。
治療
完全摘除が唯一の根治的手段。リンパ節郭清も必要。
化学療法や放射線療法は確立していない。
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